植木に関することわざ
関東の桜の見頃は終わりましたね。
これから東北、北海道が見頃になるのかな。
サクラは、上手く切らないと切り口から腐朽菌(ふきゅうきん)が入ってだんだん枯れてしまうよ。
逆にウメは、枝数が増えると花が多くつくので、適切な時期に剪定しないと花がつかないよ。
「桜切るばか梅切らぬばか」は、要約するとそんな意味だ。
桜は、日本人にとって特別な樹木だ。
わざわざ気象庁の職員が開花宣言する樹木は、桜以外に私は知らない。
この桜、造園会社も慎重に扱わないと、色んな意味で大変なんだよね。
桜の街路樹に隣接するお宅は、
花が咲いている時期以外は、実は桜が大嫌い。
夏は毛虫。
秋は落ち葉で大変だからだ。
仕事で、夏に消毒に行くと、近所の人は決まって口を揃えて言う。
花が咲いている時期だけは、
いいんだけどねぇ〜〜。
ヒステリックなピアノ教室の先生
当時24歳の見習い現場監督の私は、公共工事で公園の改良工事を受注し、横浜市内のある公園工事の現場のサブに入ることになった。
その工事は、崖を背負っているので、間知石(けんちいし)で擁壁(ようへき)を新設することが主な仕事だった。
※これが間知石(谷積み)の擁壁
擁壁設置工事もほぼ終わる頃、擁壁の上に位置するお宅から、役所に連絡があった。
そのお宅は、自宅でピアノ教室をやっているのだか、公園の桜の木の枝が敷地に入っているから切って欲しいと言うことだった。
その公園は、その辺りではまあまあ桜が綺麗な公園で、桜を切る前に、役所の担当者と地元の町内会長も立ち会って、切る位置などを決めた。
そして、桜の枝下ろしを行った。
そこまでは、まあ良かった。
しかし、剪定ではなく枝下ろしって、結構幹の太い所をチェーンソーで切るので、ピアノ教室の先生は、かなりショックを受けたらしい。
最初は、部屋から見ていた伐採作業を、途中部屋から出てきて、泣きながら、
「桜を切らないでください!」と大声で叫び始めた。
あまりの叫び声の大きさに、近所の人達が集まり始めた。
役所にも連絡が入り、伐採作業は一時中断した。
ハシゴ外し!先輩現場監督窮地!
役所から担当者が来るまで、延々と「桜が可愛そうだ」とか、「なんてことするんだ」とか言いたい放題。
「あんたが邪魔だから切れって役所に苦情を言うから、切ったんじゃねーかよ!」って下請けさんが言ったら、もう大変!
烈火のごとく、
「いいえ!私はそんなこと一言も言ってません!」
ひょぇ〜、なんだこの人は。
あなと、役所、地元自治会の会長、我が社の4者で現地立ち会って決めたんじゃない?
しかも、どこで切るって位置まで一緒に決めたんじゃん!
公園から伸びている桜の枝のことで、さんざん迷惑だなんだ文句言っていたあの人の豹変ぶりに、みんな困り果てていた。
ようやく役所の担当者と係長さんが到着すると、また、始まった。
そこまでもいい。
最悪なのはそこから。
何と役所の担当者が、言い放った一言。
「業者さんが勝手に切ったので・・・。」
先輩現場監督、「・・・・。」
自治会長さんの方を見ると、目をそらすばかりか、その場から徐々に離れていった。
先輩現場監督は、
「すいませんでした。」
と、一言。
目の奥は、怒りに満ちていたけど、あの場を収めるにはあれしかなかったのかも知れない。
若かった私は、全く納得できない気持ちでいっぱいだった。
そして、一つ学んだ、
「人を信じ過ぎちゃいけない。」
その後自分の現場を持った時は、面倒だけど、必ず打ち合わせ議事録を作成し、その場にいた人達全員からハンコをもらうようにした。
ま、当たり前のことかも知れないが、当時の公園工事は、まだまだ牧歌的な雰囲気だった。
後日、検査が終わり、私達が撤収作業をしている公園に、あの時逃げた自治会長が、のこのこやって来た。
「いやぁ〜あの時は、すまなかった。実はあのピアノの先生、ヒステリックでこの辺じゃ有名なんだよ。」
「会長〜、早く言ってよ〜!」
会長が持ってきてくれた、ニ升の日本酒。
会社に戻ったあと、お疲れさん会を開いた。
今度は、あの時一身に批判を浴びた先輩現場監督が大荒れ。
ま、仕方ないなと思いつつ、後輩の私は後始末が大変だった。
これも、人生の勉強。
現場監督時代は、現場現場に思い出がある。
あの一件も、今となっては良い思い出の一つだ。