挑戦キャンプ!
ボーイスカウトに入っていた中学校2年生の時、子供達だけで2泊3日のキャンプをする一大イベントがあった。
その名も「挑戦キャンプ」
「挑戦キャンプ」の内容は、次の通り。
- 仲間4人で神奈川県秦野市の水無川上流の作治小屋と言う場所へ行く。
- 交通手段は自転車。
- 作治小屋付近で、テントで2泊する。
- 食事は、自炊すること。
- 塔ノ岳山頂の尊仏山荘へ行き、登頂の証拠写真を撮ること。
- 出たごみ全て持ち帰り、全員無事に帰ること。
これが、2泊3日の挑戦キャンプの内容だ。
先輩たちも、この挑戦キャンプから帰ってくると、ひと回り大きくなったみたいに凛々しくて、ボーイスカウトに入ってからその話しを聞く度に、挑戦キャンプに行きたくて行きたくて仕方なかった。
そして、いよいよ俺たちの「挑戦キャンプ」の夏がやって来た。
行く前の自転車でヘロヘロ
まずは、夏休み前に計画書を作成し、隊長のOKをもらい、挑戦キャンプに行く仲間と分担して食材を買った。
交通手段の自転車は、親にねだりまくり、当時としては破格の11万円もした、ミヤタ自転車「ルマン」と言う自転車を買ってもらった。
本当に、親には感謝しかない。
ありがとう。
キャンピング用の自転車で、前後タイヤの両サイドにカバンを付けて荷物を大量に運べる21段ギアのすごい自転車だ。
(残念ながらその後盗まれてしまった(T_T))
いよいよ挑戦キャンプの当日、全員の両親に見送られ、意気揚々と出発した。
当時は、「朝からオーバーなんだよ!」って思った。
でも今、親になってみると、あの時の親の心境がよく分かる。
やっぱ心配だよな。
4人の仲間と、まちに待った挑戦キャンプへのペダルを踏み出した。
途中、コンビニで休憩しながら横浜市から藤沢市を抜けて伊勢原市に入り、国道246号線まで来た。
当時は、スマホどころか携帯電話なんて便利なものは無い1984年。
ラジオから流れるヴァン・ヘイレンの「JUMP」を聞きながらひたすらペダルを漕いだ。
途中、東名高速道路の下をくぐると、そこからは長い上りが待っていた。
善波峠まで長〜いの上り坂のキツさは、先輩たちから聞いていた。
途中、降りて自転車を押して上った。
21段もギアが付いているのに、ノンストップで登り切ることが出来なかった。
仲間の1人は、ギア無しのママチャリ。
だから、もっと大変なはずだ。
善波峠を抜けると一息つける下り坂。そして水無川まで来たら、あとは川沿いに上流に向かう道。当たり前だが上り坂。
早朝から走り出した自転車漕ぎは、午後3時過ぎにようやく作治小屋付近に到着し、長い自転車漕ぎの一日が終わった。
鹿が怖くて走って逃げた。それって、トレイルランじゃない?
作治小屋付近に到着したら、すぐにテントを設営し、飯ごうでご飯を炊き、レトルトのカレーをかけて食べた。みんな腹ペコだから、
もうメチャクチャ旨かった!
飯ごうで炊くご飯は、いつも旨い。
みんな、自転車漕ぎまくってヘロヘロだから、何を食べても旨かった。
あまりの食べっぷりに、隣でキャンプしていた人達に、おかずをおすそ分けしてもらい、それもあっという間に平らげた。
次の日は、いよいよ塔ノ岳への登山。
ラジオで天気予報を確認し、挑戦キャンプ初日は、早めに寝た。
次の朝、早めに起きて前日に作っておいたおにぎりを食べてから、乗ってきた自転車をテントにしまい、登山口に向かった。
持っていた2万5千分の1国土地理院の地図を確認しながら、慎重にそして、早歩きで登って行った。最初のポイントである新大日までは早めに着いたが、段々雲行きが怪しくなってきた。
ガスが立ち込めてきたので、もう少しペースを上げようと思ったが、ちょっと太めのA君がバテてていた。
しかし、ガスがだんだん濃くなってきたので、A君には悪いが先を急いだ。
お昼前には無事、塔ノ岳の尊仏山荘に到着した。
辺りはガスって真っ白。
山頂からの景色は「白」だった。
ガスの切れ間にみんなで写真を撮ってから、朝準備した、おにぎりを皆で食べた。
朝もおにぎり、昼もおにぎりだったけど、
山頂で食べたおにぎりは、最高に旨かった。なんで山で食べる食事は、旨いんだろう!
山頂では、近くでご飯を食べているおばさん達に話しかけられ、どうして中2の子供達だけで山登りしているのか聞かれた。
僕たちは横浜から自転車で来たこと、ボーイスカウトであること、そして、挑戦キャンプの事を詳しく話したら、「凄いね〜!」と誉められた。
みんな照れながらも、とても誇らしい気持ちて、胸がいっぱいになった。
そのおばさん達に、これから天候が崩れる予報が出ていると教えられたので、早めに下山することにした。
下山は速かった。なぜなら、走ったから。
最初は、走るつもりは無かった。
確かに天候が崩れると教えられたので早く下山しなきゃと言う気持ちはあった。
でもね、本当の理由は下山途中で鹿の親子に出会っちゃったから。
最初は、「カワイイ〜」って思った。
だけど、子鹿を連れた親鹿は、子供を守ろうとして、こっちに向かってきた。
やべ〜と思い、下りと言うこともあり4人全員、一目散でその場から逃げた。
しばらくして、振り返ったら鹿は追いかけて来なかった。
正直、ホッとした。と同時に、
「山道を走るのって楽しい」と思った。
4人全員、一目散に逃げたのがきっかけで、
山道を走ることに目覚めてしまった。
当時中学校2年生。
今から34年前にトレイルランをした。
気持ち良く、そして走ったから予定より時間以上早く下山出来たので、予定に無かった川遊びをして挑戦キャンプを満喫した。
次の日の朝、しっかりご飯を食べたあと、名残惜しいけど作治小屋に別れを告げ、自宅に向け出発した。
途中あれだけキツかった善波峠は、下りはスイスイ。
自宅に近づくにつれ、帰りたくないなぁ、時間が止まらないかなぁと思いながら、約束のポイントにしていたコンビニの公衆電話から、自宅の母親に帰宅予定時刻の連絡をした。
自宅が見えた時、全員の家族はもちろん、去年挑戦キャンプに行った、1個上の先輩まで来てくれていた。
真っ黒に日焼けした4人は、憧れの「挑戦キャンプ」をやり遂げた充実感でいっぱいだった。
もちろん、僕たち4人の仲間は、たくましくなったよ!
そして、来年の「挑戦キャンプ」の主役である一個下の後輩に、どれだけ楽しかったかを沢山伝えたので、彼らも自分達がやる時に、彼らなりに楽しんだと思う。
ボーイスカウトの制服を見ると思い出す、
「挑戦キャンプ」。
まるで、映画「スタンド・バイ・ミー」みたいな時間だった。
それと、山道を走る爽快感
今年、トレイルランやるかな!